こんにちは。皮膚研究者のポンタです。
このブログでは私の専門である皮膚の科学的な知識を活かして、男性の汗を中心とした「ニオイのお悩み解決」をしていこうと思います。
異性関係においては「あなたの印象」を、「あなたが見えないニオイ」で判断されてしまうことも多いでしょう。
また特に若い読者さんは美容に興味のある男性も増えています。
「体臭や汗のニオイの原因」がよく分からず、どう対処していけばいいか分からない方も多いでしょう。
実は皮膚や汗を出す汗腺ってわかっていないことも多く、深く知ると面白いことがたくさんあります。
人は未知のものに対して、漠然とした恐怖を抱きます。
ニオイの原因や対処法が分かれば、もっと気軽に生きていけるはずです。

Contents
ニオイは体が発する”シグナル”である


例えばこんな悩みがあると思います。
男のニオイの悩み
「最近、枕のニオイが変わってきた気がする…」
「しっかり歯を磨いているのに、口の臭いが気になる時がある…」
「疲れている時、自分から変なニオイしないか不安になる…」
このように一見迷惑にも見える体臭は、実は「重大なシグナル」なのです。
というのも体臭は、あなたの体の状態を最もダイレクトに伝えてくれるからです。
例えば、二日酔いのあとって自分でもわかるほどお酒臭いですよね。
実は一生懸命歯磨きするだけでは意味なくて、体の内部からお酒の臭いが出てくるんです。
また犬や線虫は、人間の尿からがんを検知したりするらしいです。
あなたの体調を伝えるシグナルとしての役割をもつ一方で、体臭は相手の気分にも作用します。
あなたが、どんなに素晴らしいスーツを着ても、生乾きや汗臭い不快なニオイがあればどうなるでしょう?
あなたの印象は、無意識のレベルで、大きく損なわれてしまいます。
このようにニオイは、人間の五感の中で、最も原始的で、そして、最もダイレクトに、相手の記憶や感情に作用します。
現代の医療では、体のニオイから体調を分析することは行なっていません。
そのため体のニオイは、シンプルに「相手の感情を良くも悪くも動かすもの」になっています。
体のニオイをどう捉えるか?ニオイの発生ルート
ニオイは見えないからこそ、不安にもなります。
このように体臭という、この捉えどころのない現象は
・皮膚表面で発生するニオイ
・体の内側から発生するニオイ
という、2つの大きな視点から科学的に分解して理解するといいです。

これは後ほど詳しく説明します。
体臭を理解するための“大原則”
ここから体臭について詳しく説明していきます。

それがこちらです。
ポイント
原則①:ニオイは、何かが“分解”された結果である
原則②:ニオイの発生ルートは、主に2つある
①ニオイは、何かが“分解”された結果である
体臭は、何もないところから、魔法のように湧いてくるわけではありません。
実はそのほとんどが、「代謝産物」によるものなのです。
人間は生きるためにご飯を食べて排泄します。その過程でエネルギーを作りますよね。
このように摂取した「食べ物」や「飲み物」を、他の物質に「分解」あるいは「代謝」した結果、代謝産物が生まれ体臭が発生します。
そして体臭を考える時には、「菌」が非常に重要な役割を果たします。
例えば、汗や皮脂が「菌」によって分解される。
食べたものが「消化酵素」や「腸内細菌」によって分解される。
アルコールが「肝臓」で分解される。
この「分解・代謝」というプロセスを理解することが、全てのニオイ対策の出発点となります。

つまり菌や体内が「代謝や分解」することで、あなたからニオイが発せられるということです。
②ニオイの発生ルートは、主に2つある
体臭が発生する基本的な部分は理解してもらったと思います。
次は「ニオイの発生ルート」です。
つまり体や、体にいる菌がどのように「代謝や分解」を通してニオイを発しているか?ということです。
このルートには以下の2つがあります。
ポイント
【ルート1】皮膚表面・発生経路
【ルート2】体内発生・血行性経路
【ルート1】皮膚表面・発生経路
一番オーソドックスな経路です。
夏になると汗臭い人が増えますよね。営業周りから帰ってきた後などは、周りに匂いを撒き散らしてないか気になりますよね。
実は汗自体はそもそも無臭なんです。

まず汗や皮脂、垢といった、皮膚の表面にある分泌物が、皮膚常在菌によって分解されます。
その結果ニオイが発生する、最も一般的なルートです。
「汗臭」や「加齢臭」などが、これにあたります。
【ルート2】体内発生・血行性経路
体の内側(主に腸内や肝臓)で発生したニオイ物質が、一旦、血液中に吸収され、血流に乗って全身を巡り、最終的に、皮膚の汗腺(血漿汗)や、肺(呼気)から、体の外に放出されるルートです。
つまり食べたものが分解され、吸収される段階で発生していくのです。
「疲労臭」や「食事臭」、「口臭」の一部が、これにあたります。

成人男性を悩ませる「4つの皮膚からのニオイ」とその対策
この章より、具体的に体臭を分類して詳しく説明していきます。
まず、最も一般的である、皮膚表面で発生する体臭から、その正体を暴いていきましょう。

皮膚からの4大体臭
体臭①:「汗臭」— 全ての基本となる、酸っぱいニオイ
体臭②:「ミドル脂臭」— 30代から40代を襲う、使い古した油のニオイ
体臭③:「加齢臭」— 40代以降の、避けては通れない課題
体臭④:「ワキガ臭」— 遺伝的体質による、特殊なニオイ
体臭①:「汗臭」— 全ての基本となる、酸っぱいニオイ
多くの男性を悩ませる「汗のニオイ」です。
ニオイの特徴
鼻にツンとくる、酸っぱいようなニオイ。いわゆる、一般的な「汗臭さ」。
発生メカニズム
これは、主に「エクリン腺」から出る、サラサラした汗が原因です。
かきたての汗は無臭です。
しかしその汗に含まれる乳酸や皮脂、皮膚表面の垢(角質)などが、皮膚の表面にいる菌によって分解されニオイが出るのです。
具体的には皮膚常在菌の一種である「表皮ブドウ球菌」などによって分解され、不快なニオイを持つ、様々な種類の「短鎖脂肪酸」が産生されます。

例えば、いくつかの短鎖脂肪酸では以下のようなニオイがします。
短鎖脂肪酸ごとのニオイ
- 酪酸: 銀杏、蒸れた足、くさや、チーズのような強烈なニオイ。
- プロピオン酸: 刺激的で酸っぱいニオイ。
- 吉草酸: 蒸れた靴下のようなニオイ。
- 酢酸: お酢そのものの、ツンとした酸っぱいニオイ。
対策の核心
聞いたことがあるかしれませんが、汗には「良い汗」と「悪い汗」の二種類があります。
スポーツをしている人の汗は臭くないと言われるように、運動不足の人は汗腺の機能が落ちて「悪い汗」をかいてしまいます。
悪い汗は、細菌のエサがたくさん含まれているため臭くなるというわけです。
ポイント
汗の質を改善する:運動や入浴による「汗腺トレーニング」で、ミネラル分の少ない、サラサラの「良い汗」をかけるようにする。
迅速な処理: 汗をかいたら、放置せず、こまめに拭き取る、あるいは、シャワーで洗い流す。
菌の繁殖抑制: 殺菌成分配合のボディソープや、制汗剤を活用する。
体臭②:「ミドル脂臭」— 30代から40代を襲う、使い古した油のニオイ
次におじさん臭さですね。
自分では気づきにくく、一般的な汗のニオイや、より高齢になってから発生する「加齢臭」とは原因もニオイの種類も異なります。
ニオイの特徴:
使い古した食用油や、古いポマードのような、脂っぽく、少し甘ったるい、独特の不快臭。
発生メカニズム:

汗に含まれる「乳酸」が、皮膚常在菌の一種の「黄色ブドウ球菌」などによって分解され、「ジアセチル」という、強烈なニオイ物質が産生されます。
このジアセチルが、中高年男性特有の皮脂のニオイと混ざり合うことで、「ミドル脂臭」が完成します。
発生しやすい部位:
皮脂腺が発達し、汗もかきやすい、後頭部、うなじ、頭頂部にかけてが、主な発生源です。「枕が臭う」と感じたら、まず、このミドル脂臭を疑うべきです。
対策の核心:
頭皮は皮脂腺が多いので、ニオイが出やすくなります。
1日お風呂に入らなかっただけで、獣のようなニオイがします。
対策としては「皮脂腺の多い頭皮をしっかりと洗う」ということになります。
ポイント
後頭部・うなじの徹底洗浄: シャンプーの際に、後頭部やうなじまで、意識して、丁寧に洗いましょう。
殺菌成分や、皮脂の酸化を防ぐフラボノイドなどが配合されたシャンプーが有効です。
枕カバーの頻繁な交換: 酸化した皮脂や雑菌の温床となる枕カバーは、最低でも週に2〜3回は交換、洗濯しましょう。
抗酸化と、乳酸を溜めない生活: ビタミンC・Eなどの抗酸化物質を食事で摂ることや、ストレスや疲労を溜めず、体内の乳酸濃度を上げない生活が、間接的に有効です。
体臭③:「加齢臭」— 40代以降の、避けては通れない課題
多くの男性が悩む「加齢臭」です。
歳を重ねると代謝機能が徐々に変化していくことで、加齢臭が発生していきます。
ニオイの特徴:
古本や、枯れ草、古いロウソクのような、青臭く、脂っぽいニオイ。
発生メカニズム:
年齢を重ねると、皮脂の中に「パルミトオレイン酸」という脂肪酸が増加します。
この脂肪酸が、皮膚表面の過酸化脂質(酸化したアブラ)によって酸化・分解されることで、「ノネナール」という、特有のニオイ物質が産生されます。
これが、加齢臭の正体です。ミドル脂臭とは、発生メカニズムも、ニオイの種類も、全く異なります。
発生しやすい部位:
皮脂腺が多く、空気に触れやすい、胸、背中、首の後ろ、耳の後ろなどが、主な発生源となります。
ポイント
対策の核心:
徹底的な洗浄: ニオイの元となる、酸化した皮脂を、毎日、確実に洗い流すことが、最も重要です。特に、耳の後ろなどは、洗い残しやすいので、意識して洗いましょう。
抗酸化対策: 体の内側と外側、両面からの抗酸化対策が鍵となります。食事では、ビタミンC・E、ポリフェノール(緑茶、カカオなど)を積極的に摂取。ボディソープも、**抗酸化成分(柿タンニン、茶カテキンなど)**が配合されたものを選びましょう。
生活習慣の見直し: 活性酸素を増やす、喫煙や、過度な飲酒、ストレスは、皮脂の酸化を促進し、加齢臭を悪化させます。
体臭④:「ワキガ臭」— 遺伝的体質による、特殊なニオイ
これまではどんな男性にも起きうる体臭について扱ってきました。
ワキガは体質によるものが大きいです。
ニオイの特徴:
硫黄、スパイス、鉛筆の芯などに例えられる、他の体臭とは一線を画す、独特で、強いニオイ。
発生メカニズム:
これは、これまでの体臭とは、根本的に発生機序が異なります。
「アポクリン腺」という汗腺から分泌される脂質やタンパク質を豊富に含んだ汗が、皮膚常在菌によって分解されることで発生します。

対策の核心:
生活習慣の改善だけでの根治は、不可能です。制汗(汗を止める)、殺菌(菌を殺す)、そして、医療という、専門的なアプローチが必要となります。
具体的には、塩化アルミニウム配合の制汗剤、ボトックス注射、そして、根治治療であるミラドライなどが、有効な選択肢となります。
体の“内側”から発生するニオイとその対策
これまでは皮膚からのニオイについて説明してきました。
皮膚表面のケアだけでは、解決できない体臭も存在します。
それは、あなたの体調や、生活習慣を、如実に反映する、体からの「警告信号」でもあります。
体臭⑤:「疲労臭」— 体が発する、アンモニアの危険信号
人間はエネルギーを作る中で、どうしても体内にアンモニアが発生します。
通常は肝臓で無害な尿素に変換されますが、ストレス下ではうまく分解できません。
その結果体から分解しきれなかったアンモニアが血中に流れて、体臭として検知されます。
ニオイの特徴: 鼻にツンとくる、アンモニアのような、尿に似た刺激臭。
発生メカニズム: 人間の体は、タンパク質を分解する過程で、有毒なアンモニアを生成します。
通常、このアンモニアは、肝臓で、無毒な尿素に分解され、尿として排出されます。
しかし、激しい運動、過度なストレス、暴飲暴食、睡眠不足などによって、体に大きな負担がかかり、肝機能が低下すると、分解しきれなかったアンモニアが、血液中に溢れ出してしまいます。
そしてその血中のアンモニアが、汗や皮膚ガスとして、体外に放出されるのです。
対策の核心: これは、小手先のケアでは解決しません。
「休養」こそが、唯一の治療法です。肝臓の働きを助けるオルニチン(シジミなどに多く含まれる)や、クエン酸などを摂取することも、補助的に有効です。
疲労臭は、あなたの体が「もう限界だ」と叫んでいる、悲鳴なのです。
ちなみに皮膚ガスの権威である関根先生は、この皮膚からのアンモニアの排出量を計測して疲労度を可視化しようという取り組みも行っています。
体臭⑥:「食事臭」と「口臭」— 最も直接的な、他者への影響
エチケットで非常に大事な「口臭」です。
食べた後は歯磨きをするなどで防止することができますが、当然食べたものからもニオイは発生するので注意が必要です。
食事臭:
ニンニク、ニラ、アルコール、香辛料など、食品に含まれる揮発性のニオイ成分が、直接、血中に取り込まれ、汗や呼気として排出されるものです。
対策は「重要な日の前日には、摂取を控える」という、自己管理以外にありません。
口臭: 体臭の中で、最も近距離で、相手に不快感を与えるのが、口臭です。その原因の9割は、**歯周病、虫歯、そして、舌苔(ぜったい:舌の表面の白い苔状の汚れ)**といった、口の中にあります。
対策の核心: 毎日の丁寧な歯磨きと、フロスによる歯間清掃。そして、**「舌磨き」**の習慣化が、極めて重要です。専用の舌ブラシで、奥から手前に、優しく、数回、撫でるだけで、ニオイの原因菌の温床となる舌苔を、劇的に減らすことができます。また、定期的な歯科検診で、歯周病などを根本から治療することも、不可欠です。
体臭⑦:「病的体臭」— 命に関わる、稀なサイン
最後に、非常にまれですが、特定の病気が、特有の体臭を引き起こすことがあります。
甘酸っぱい、果物のようなニオイ(アセトン臭): 重度の糖尿病(糖尿病ケトアシドーシス)
ドブや、カビのようなニオイ: 重度の肝機能障害
魚が腐ったようなニオイ: 魚臭症(トリメチルアミン尿症) もし、ご自身の体から、これまでにない、奇妙なニオイが続くようであれば、それは、何らかの病気のサインかもしれません。ためらわずに、内科を受診してください。
まとめ:ニオイを制する者は、人生を制す
このように「体臭」と言っても、いろんな種類/発生原因があることがわかったと思います。

今回は大まかに体臭について詳しく説明していきました。
ご自身の状況に合わせたニオイの対策については、各章で紹介した記事を参照ください。